2020年8月21日
人体解剖オンラインセミナーを終了して
その人は裸で横たわっていました。
顔はマスクで覆われていましたが、乳房も陰部も生まれたままの状態で横たわっていました。
さぁ、私の体を隅々まで見なさい。
私の体の細部まで注意深く観察しなさい。
そう言っているようでした。
私にも体の内部はあるのに体の中身は見たこともなかったし、よく知らない。
参考書をくまなく見てても実際の中身は全く知らない。
皮膚の上から触っていてもその下の組織の動きのイメージはかなり曖昧なものでした。
5日間のオンラインでの人体解剖セミナーのツアーは私の知識が増したと言うよりは視覚的なイメージが頭の中でしっかり残像として残ったことが大きな収穫でありました。
知識と身体に触ったときにその下にある組織のイメージが手の感覚と頭の中でしっかりと一致しました。
参考書はやはり部位がわかりやすいように描かれているのですね。
実際の体の中の筋肉は膜に包まれ、きれいに境目があるわけではなく(よく見ると境目はある)それでも運動機能において少しも無駄のなくスムーズな動きをするための組織のつながりのラインがよくわかり、見事でした。
オンラインの解剖実習で足りないことといえばやはり組織の感触(質感)弾力、癒着のつよさ、音、メスで切る感触、 がわからないことでしょう。 さらにzoomの画質は直接見ることよりは劣ること。 実際に肉眼で見るのとは違うのでしょう。
しかし皮膚の中に広がる世界、体の神秘に震えるような感動を覚えました。 水分に満たされて、脂肪層がクッションなり、筋膜や筋肉はキラキラして美しい。決して気持ち悪くないのです。
そして健康に生きるためにこれらの組織を痛めることなく酷使することなく丁寧に使っていきたいと改めて思いました。  
ご献体の80代女性の切り取った筋肉組織、臓器、骨はこのあとようやく荼毘にふされご家族の元へ帰っていきます。
自分の体を役立ててほしい、人格者であったに違いありません。亡くなってはいますが親しみを感じずにはいられません。死してもなお私たちの学びのため献体としての働きを終え、最後は合掌しご冥福をお祈りしました。学ぶ者たちへのため自らの体を献体として私たちに提供してくれたこととても感謝しています。
手際よく完璧な解剖を遂行するトッドとを同時通訳の谷さん、豊富な知識と経験を解説をしてくださったトム、素晴らしいチームにも深く感謝しています。ありがとうございました 。 この人体解剖オンラインセミナーで参考書で見てきた平面2Dの形が立体的3Dでさらに動きを知ることができ、深く構造を知ることができました。
深く知るっていうのはかくも面白い。 まだまだ追求の旅は続きますね。
一生、学びは終わらないのでしょう。これからも歩みを止めず好奇心を持って進んで行きたいと思います。